不正咬合1
不正咬合とは
上顎(上アゴ)の歯全体が前に突き出ていて歯ならびが悪い(上顎前突、いわゆる出っ歯)、上下の歯のかみ合わせが逆で、下顎(下アゴ)の歯のほうが前に出ている(下顎前突、いわゆる受け口)、歯が正しい位置・方向に生えていない(叢生、いわゆる八重歯)、歯と歯の隙間が異常に大きい(正中離開)、上下の歯の間が開いている、歯が噛み合わない(開咬)といったことのために、正しいかみ合わせができない状態を不正咬合といいます(それそれの異常については、次項にて解説)。これらの不正咬合の状態が1つだけの人もいますが、上顎前突と叢生、下顎前突と正中離開といったように2つ以上の不正咬合が重なっている人もいます。
遺伝でおこることもありますが、多くは舌を前に出して歯を押す癖(弄舌癖)、唇を噛む癖(咬唇癖)、指しゃぶりといった悪習慣が原因でおこります。
また、歯の数が不足していたり、歯の数が多すぎたりする歯数の異常、歯の形や大きさの異常、乳歯が早く抜けたり(早期喪失)、乳歯がいつまでも残っていたり(晩期残存)、乳歯が抜けたあとの永久歯の生え方が大幅に遅れたりして乳歯と永久歯の交替が順調に行なわれないなどが原因でおこります。
そのほか、歯が骨と癒着する、歯を失ったあと放置するといったことが原因でおこることもあります。
不正咬合の一般的治療
不正咬合の治療の第1の目的は、美容のためではなく、アゴの関節に無理がかからないように良い噛み合わせにして、しつかりと食べ物が噛め、正しい発音ができ、虫歯にもかかりにくいなど歯とロの役割が充分に果たせるようにすることです。
矯正治療は、色々な装置を使用して、歯を除々に移動させて正しい歯の位置にするのが主体となります。最近もっとも多く使われているのは全帯環装置を装着する治療で、どの種類の不正咬合にもよく用いられます。
これは、すべての歯に帯環(バンド)やアタッチメントを接着させて、これと金属線を結び、金属線の弾力を利用して多くの歯を動かして矯正するもので、この装置の開発によって、最近は矯正にあまり長い時間を掛けずに済むようになってきました。ただし、この装置は歯だけしか動かすことができません。
また、全帯環をかけていると、ロを開けているときに目立ちます。このため、目立たないレジン製の透明な装置を接着剤で歯に直接張りつけるなどの新しい方法も試みられています。
また、全帯環装置は一度取り付けると外すことができず、もし装置を付けたまま虫歯になると、矯正どころか治すべき歯そのものを失うことになりかねません。このため、歯みがきを完璧にできるようにならなければ矯正治療に入れませんし、もし虫歯があればその治療を最優先で完全にしておくことが必要です。